生命力を高める生活~腸内フローラ・酵素・ミトコンドリア~

主に腸内フローラ・酵素・ミトコンドリアで生命力を高める方法について書いています。

「人間(ヒト)中心主義」が生命を大切にするわけー『抗生物質と人間』

当ブログでは、腸内フローラ・酵素・ミトコンドリアによって生命力を高める方法について述べていますが、今回は山本太郎氏の『抗生物質と人間ーマイクロバイオームの危機』の書評・感想を述べつつ、「人間(ヒト)中心主義」が生命を大切にするわけについて書いていきたいと思います。

 

抗生物質と人間ーマイクロバイオームの危機

 

長崎大学熱帯医学研究所の教授である山本太郎氏の抗生物質と人間ーマイクロバイオームの危機』(岩波新書)は、抗生物質の乱用に対して警鐘を鳴らす一冊として興味深い内容になっています。

 

また、新書であるにもかかわらず、腸内細菌叢をはじめとした微生物の世界について詳しく簡潔にまとめられていますので、抗生物質のことだけではなく、マイクロバイオータとマイクロバイオームの違いなど、微生物のことについて全般的に知りたいという方にも大変オススメです。

 

しかし、本書では抗生物質の乱用を問題視していますが、著者の山本太郎氏は抗生物質の存在を全否定しているわけではなく、「抗生物質の使用がいけないわけではない。抗生物質が生命に対していかに劇的な効果を示すか私たちはこれまでにも見てきた。その過剰使用が問題なのである」と述べています。

 

ペニシリンストレプトマイシンなどの抗生物質が人びとを多くの病気から救ったことは確かです。しかし近年は、必要以上に抗生物質を乱用することによって、腸内細菌の攪乱(かくらん)が起き、そのことが炎症性疾患や自己免疫疾患、アレルギー性疾患などの増加をもたらしたのだとすれば、それは皮肉だとしか言いようがありません。

さらに、家畜の成長を促すために、抗生物質が大量に使われているという事態が、動物やヒトのからだに少なからぬ影響を与えていることも、重く受け止めなければならないように思います。

 

そして、本書『抗生物質と人間ーマイクロバイオームの危機』を読むと、その逆説的な「ポスト抗生物質時代」に突入した現在において、「抗生物質」とどのように向き合っていくかが問われているように感じます。

 

このことに関して、著者の山本太郎氏は、本書の第6章「未来の医療」において、「私たちに残された道は、その使用法を見直すことしかない」とし、さらに「私たちに残されている道は一つしかない」として、微生物との「共生、共存」について言及しているのは、非常に考えさせられます。

 

抗生物質と人間ーマイクロバイオームの危機

 

真の 「人間(ヒト)中心主義」とは?

また、本書に書かれている以下のくだりが印象的でした。

 

 

 私たちはこれまで、「私」というものが、独立した個別の存在だと考えてきた。しかしそれは、私たちの思い込みにすぎなかったのかもしれない。個別の存在だと考えてきた「私」は、実は「私」に常在する細菌とともに「私」を構成している。そうした「私」は「マイクロバイオータ」と呼ばれる常在細菌叢との相互作用を通して、生理機構や免疫を作動させ、「私」をかたちづくる、と書けばどうだろう。山本太郎抗生物質と人間―マイクロバイオームの危機』 p70) 

 

ヒトが、ヒトを至高の存在とみなし、その存在に絶対の価値を置き、それを担保とするためには、他の生物やそれを支える環境の存在が欠かせないということである。そしてそれは、「人間非中心主義」の考え方に通じる。すなわち、人間中心主義は、人間非中心主義を部分的に包摂することによって、初めて成立する概念だということになる。山本太郎抗生物質と人間―マイクロバイオームの危機』 p147)  

 

 

つまり、「私」とは、ヒトである「自分」のことだと、つい捉えてしまいがちになるのですが、実は、その自分とは、微生物をはじめとした自分以外の存在によって成り立っているものなのです。

 

すなわち、「人間(ヒト)中心主義」が生命を大切にするわけは、真の「人間(ヒト)中心主義」とは、「人間中心主義」に支えられていることで成り立っているからなのです。

 

抗生物質と人間ーマイクロバイオームの危機

 

要するに、真の「人間(ヒト)中心主義」とは、人間が他のあらゆる生命の優位に立とうとするがゆえに、人の生活圏から他の生物を単純に有害なものと見なして排除することではなく、山本氏が述べるように「ヒトが、ヒトを至高の存在とみなし、その存在に絶対の価値を置き、それを担保とするためには、他の生物やそれを支える環境の存在が欠かせない」ということなのです。

 

このようなことを考えるためにも、山本太郎氏の『抗生物質と人間ーマイクロバイオームの危機』はお勧めです。

 

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