『闘う微生物』は抗生物質や農薬の濫用から人体を守る道筋を示した一冊。
当ブログでは、腸内フローラ・酵素・ミトコンドリアによって生命力を高める方法について述べていますが、今回は『闘う微生物 抗生物質と農薬の濫用から人体を守る』(エミリー・モノッソン 著 小山重郎 訳 築地書館)という本を、ご紹介していきたいと思います。
前回の記事は山本太郎氏の『抗生物質と人間ーマイクロバイオームの危機』の書評・感想でしたが、独立した研究者であるというエミリー・モノッソン氏の、『闘う微生物』(小山重郎 訳)は、「抗生物質と農薬の濫用から人体を守る」という副題の通り、抗生物質や農薬の濫用から、これからどのような方法によって人体を守っていくか、ということの道筋を示した一冊だといえそうです。
本書『闘う微生物』の特色は、科学研究の進歩や最新の成果を信頼しつつ、抗生物質や農薬の問題に関して合理的な解決策を示していることだといえます。
この点に関しては、訳者の小山重郎氏が、「生態学にもとづき、最近のゲノム学、コンピューター学の進歩を取り入れるならば、自然と敵対するのではなく、自然を味方につけた解決方法が生み出されることについて、彼女は楽天的である」と述べていますが、抗生物質に関しては、最低限の使用に止め、農薬の問題に対しては、農薬や化学肥料をなるべく使わない有機栽培を行うといったようなことが、具体的な問題の解決策として示されているわけではありません。
このことに関して、特に印象的なのは、
- バクテリオファージ・・・ウイルスを利用して特定の病原菌を倒す。
- 昆虫によるフェロモン・・・フェロモンによって特定の作物害虫を防除。
- 病気や病原微生物の診断・・・・DNA塩基配列を判別する機器やスマホなどの情報信機器を用いて速やかに行う。
といったことについての言及です。
この本はすべてを有機栽培にしようとするものではない。また、抗生物質による処置を否定するものでもない。そのかわりに、一歩一歩進み、私たちの化学物質漬けの過去から離れて、自然ともっと調和する未来へと進もうとするものである。
これらの自然の防御――微生物群を維持することから、ウイルスを役立てることへ、また昆虫の感覚を混乱させることまで――について私は楽天的であり、その考えを読者と分かち合いたい。
(エミリー・モノッソン『闘う微生物 抗生物質と農薬の濫用から人体を守る』 小山重郎 訳 p6~7)
また、『闘う微生物』においては、「前世紀には、私たちは自然を支配しようと試みたことで痛い目にあった。今度の世紀は新しい知恵を授ける」として、以下の項目について、著者なりの考えが述べられています。
- 「害虫と病原体は常に存在する。」
- 「私たちは生態学を重視しなければならない。」
- 「私たちは微生物に満ちた世界の中にいる少数の大型生物である。」
- 「私たちは白と黒の世界に住んでいるのではない。」
- 「自然それ自身は有力な味方である。」
- 「特異性は二次的な損害を減らす。」
- 「迅速診断が基本である。」
- 「予防に勝る治療はない。」
- 「最良の解決法は、もしそれらが手に入らなければ、役に立たない。」
- 「奇跡の治療はない。」
- 「宣伝は科学ではない。」
具体的にどのようなことが述べられているかについては、実際に本書を手に取って確認していただきたいと思いますが、これらのことは、これまでの歴史を踏まえつつ、これからの21世紀において、私たちと微生物がどのように正しく共生していくかを考えるための指針になるように思います。
ちなみに本書『闘う微生物』のなかでは、食事によって腸内フローラを改善するための具体的な方法などについては一切書かれていませんが、特に前回ご紹介した山本太郎氏の『抗生物質と人間』と併読すると、これからの時代の微生物との向き合い方についての視野が広がるように感じます。
また、同じ築地書館から出版されている『土と内臓 微生物がつくる世界』も、これからの未来を考えるうえで興味深い一冊です。
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